空飛ぶウミガメと成田の桜

衝撃の展開、そして北へ

最近はあまりエアバンドを聞かず
スマホアプリ「フライトレーダー24」だけを頼りに
のんびりと撮影することが多かった。

東京アプローチに耳を傾けていたのは
午後から風向きが変わるから

アプローチが一番早く
「風の変化」を教えてくれる。

しかし……

「っっっ!! マジか!!」
「よりによってこのタイミングで!!」

そう、
まさかこのタイミングとは
思いもよらなかった。

聞こえてきたのは
衝撃のフレーズ――

ランウェイ ワン シックス ライト……

ランウェイ チェンジ

「空飛ぶウミガメ」がハンドオフした際の
管制官の返信内容だった。

「??……え~っと……わんしっくす?
……って言ったよな?」
「すりーふぉーじゃなくて??」
「ワンシックスライトだと…
…どこへ行けばいいんだっけ??」

見事パニックになる(笑)

しかし、いつまでも路上で呆けているわけにいかない
ウインカーを逆にして発進する。

競走相手のA380型機は
北から南に向かって着陸するため
ふたたび北上を開始していた。

たくさんの到着機を引き連れて
さながらラップリーダーのようだった。

北へ進んでいるのは自分と一緒だ。

ゴール地点は「さくらの山公園」
空と地上のレースが始まる。

移動中いろんなことが頭に浮かぶ。

「間に合うのだろうか……」
たぶん、ギリギリ、大丈夫なはず。

「どうやって撮影しよう……」
公園には撮影ポイントがたくさんあり悩ましい。

不安と期待が入り交わる。

とんだ騒動になったが、
順光で桜と絡めた撮影ができる唯一の場所。

「もしかして……
さくらの山公園のほうがよかったかも……」

そう思うようになっていた。

地上の乗り物はせいぜい時速60km。

空の乗り物は時速400km以上だが
大きく迂回してやってくる。

茨城県上空でUターンを終える
ちょうどそのころ
先に到着した。

「なんとか間に合った……」

しかし気を抜くのはまだはやい。

――すぐ準備しないと」

カメラを取り出し、人込みの中をかいくぐりながら
公園へ入っていく。

それにしてもすごい混雑だ。
老若男女、かつてないほどの人であふれていた。

「みんな“このイベント”に集まっているのだろうか?」

不思議に思ったが、気にしている暇はなかった。
ターゲットの「空飛ぶウミガメ」は
目と鼻の先まで来ている。

公園内の各撮影ポイントを見て回るはずが
それもできない。

「早く立ち位置を決めないと……」

あせりながら考える
だがもうタイムオーバーだ。

「しかたがない……」

せっかくのこの“混雑”だ
これを生かさない手はない!

広場には大勢の人がいて
何かを期待した雰囲気に包まれていた。
家族連れの人達も、誰も彼も、
これから「特別な飛行機」が飛来することを
あらかじめ知っている様子だった。

そして、いよいよやってくる。

あたりは異様な雰囲気になってきた。

その様子をフレームに入れて、あとはシャッターを切るだけ。

このお祭り騒ぎに立ち会えてよかった。

みんながスマホを掲げはじめる。

そして――

パシャリ。

周囲から歓声が沸き起こる。

ウミガメが気持ち良さそうに
空を泳いでいた。

エピローグ

後から知ったことだが、慣熟フライトの
「初飛行」だったようだ。
一枚目の写真は、成田空港から
「はじめて」離陸する様子を
「桜と絡めて」撮影できた
貴重なカットだと思いたい。

これほどまでに
満員お礼となったさくらの山公園、
注目を一身にあびるような被写体も
この先なかなか出会えないだろう。

まさに幸運の連続だった。

成田山のお不動さまに感謝して――

太陽は西へすこしだけ傾き
南風になった成田の昼下がり。
なにかひと仕事終えた気分になっていたが
これからが本番だった。

本来のメインイベントは
B滑走路周辺で桜との絡みを撮影すること。
すでに到着ラッシュがはじまっている。
次々とやってくる飛行機を
一機でも逃すまいと
ひと休みすることもなく

つぎの目的地へ向かった。

<終わり>